【エメ光】揺蕩う午睡【尾を引く箒星8】

【エメ光】揺蕩う午睡【尾を引く箒星8】

 人の輪の中にあってなお、少女は薄い笑顔を讃えていた。  クリスタリウム、クリスタルタワー前広場にて。  星見の間から出てきた暁の面々はそれぞれに住人達に捕まっていた。出来上がる人の輪の真ん中で少女はいつもの調子で薄く笑…

【エメ光】混じり合う傷痕【尾を引く箒星7】

【エメ光】混じり合う傷痕【尾を引く箒星7】

ちゃぷりと木桶の中でお湯が揺れる音がする。 エメトセルクの手がその湯に浸したタオルを引き出し固く絞る。それを受け取ろうとした少女の手を取り、小さな指先から優しく拭っていく。 「…自分で」 「私がしたいからしてるんだ」 少…

【エメ光】撥無の果て【尾を引く箒星6】

【エメ光】撥無の果て【尾を引く箒星6】

「珍しいな。お前が起きている」  ラケティカ大森林の木漏れ日の中、そののどかな光景に不釣り合いな黒い大剣を携えた少女を、エメトセルクは大木にもたれかかったまま眺めていた。 「……いつも寝てるわけじゃないよ」  身の丈ほど…

【エメ光】月のない夜の記憶【尾を引く箒星5】

【エメ光】月のない夜の記憶【尾を引く箒星5】

 ペンダント居住区 闇の戦士居室にて  ララフェルの体には大きすぎるベッドの上で、少女は小さく丸くなって眠っていた。  外は宵闇。月の出ない夜は星明かりも弱々しく瞬く。いつもは空を見るため開け放たれた窓はぴたりと閉じられ…

【公光】羨望

【公光】羨望

 部屋主のいない室内に、くぐもった声が小さく響く。  整えられた室内の隅、整えられていたベッドのシーツはくしゃりと乱れ、枕に顔を埋めたまま半分フードの外れた水晶公は眉根を寄せて自身のオスに手をかけながら小さく息を漏らした…

【エメ光】旭日の支配【尾を引く箒星4】

【エメ光】旭日の支配【尾を引く箒星4】

 いつの間に眠っていたのか…少女は瞼に当たる朝日の感触で目を覚ました。遠くから鳥の鳴き声と小さく波音が聞こえる。  昨夜一体どうしたんだっけ? そう思案しながら瞳をゆっくり開いた少女は、大きな腕に抱きとめられた自身を認識…

【エメ光】闇然の懺悔【尾を引く箒星3】

【エメ光】闇然の懺悔【尾を引く箒星3】

「…やはり、英雄殿には奇妙な趣味があるのか?」  いつか聞いたセリフを聞いた気がして、少女はゆっくり瞳を開いた。 「…珍しいね…こんなところまで追いかけてくるなんて」  視線だけを移して少女は見下ろしてくるエメトセルクを…

【エメ光】尾を引く箒星 2

【エメ光】尾を引く箒星 2

 少女がぼんやりと目を開ける頃、空には星が瞬き夜の虫たちが静かに合唱をしていた。  ベッドの縁に座ったまま片手で少女の手のひらを弄びながら本を読んでいたエメトセルクは、少女が身じろいだのを感じ視線を本から動かした。ぼんや…

【エメ光】尾を引く箒星

【エメ光】尾を引く箒星

「英雄様には奇妙な趣味があるんだな」  硬い感触を感じながら、ぶっきらぼうに投げかけられた言葉に私は意識を揺り戻す。  硬い床の感触を頬に感じる。体が重い。頭がぼんやりと痛い。  這いつくばるように肘で上半身をかろうじて…

【公光】赤い瞳の思案

【公光】赤い瞳の思案

 ここはどこだろうか。  私は見知らぬ天井を見上げながらぼんやりと瞳を開ける。アーチ状の梁を見つめながら記憶を揺り戻そうとする。 「あ、目が覚めましたか?」  不意に横から声をかけられて思考を分断される。ゆっくりと顔を動…