「…やはり、英雄殿には奇妙な趣味があるのか?」
 いつか聞いたセリフを聞いた気がして、少女はゆっくり瞳を開いた。
「…珍しいね…こんなところまで追いかけてくるなんて」
 視線だけを移して少女は見下ろしてくるエメトセルクを見上げた。さわりと柔らかい風が頬を撫でる。色とりどりに咲き誇った花々がゆっくり揺れて頬を掠めていく。
 イル・メグの花々は今日も鮮やかに咲き乱れる。
「…まるで死人ではないか」
 胸の上で両手を組み、その上に妖精が乗せたのだろうか小さな花輪が乗っている。
 しゃがみ込んであからさまなしかめっ面をするエメトセルクに少女は薄く微笑んだ。
「ちょっと寝てる間にやられたみたい…」
「無防備にもほどがあるだろ」
 歴戦の冒険者が妖精の気配に気づかないはずがない。ましてここの妖精は少女の事をきちんと認識しているのだから、驚かすために気配を消して何かをすることもない。
「悪気がないのはわかっているからね」
 さやさやと吹く風と優しい陽光を受けて少女は今一度ゆっくりと目を閉じる。
「…また寝るのか」
「もう起きてるよ…」
 瞳を開けないまま呟くように言う少女の様子にため息を一つ落とす。
 少し乱暴に少女の細い腕を引いて自分の腕の中に抱き上げる。花輪を拾い上げてその頭に乗せてやる。
「この方が幾分マシな姿というものだ」
 腕の中に少女を抱いたままエメトセルクはゆっくりと立ち上がる。
 行きたいところがあるなら連れて行く、短くそう告げるエメトセルクに少女はかぶりを振る。
「どこにも…いけないし」
 それが何を指し示しているのか、察しがついてしまうのが辛い。
「…息抜きの一つでもするか?」
 問われた少女が首をひねる。十分に眠って息抜きはできている、そう言う少女に肩をひとつ竦めてその頬を優しく撫でてやる。
「それは息抜きとは言わん。せいぜい休息と呼ぶ程度だ」
 その手でぱちりと指をはじくと2人の姿が漆黒の次元の闇に飲まれた。2人がいた場所に花輪がひとつぱさりと落ち風に吹かれた。

 うっすらと瞳を開けた少女の目に色とりどりの提灯の灯りが飛び込んでくる。
 エメトセルクが少女の顔を隠すように抱きかかえる。意図がわからぬままその腕の隙間から様子を窺えば着物姿の男性と小さな声で密談をするエメトセルクが見える。
 これだけ近くにいるのに少女にすら聞こえないように二言三言言葉を投げかけたエメトセルクが、男性の横を通り過ぎる。男の下卑た笑い声が耳に届く。
 状況がわからぬままエメトセルクの腕に揺られどこかへと運ばれている事実だけがわかる。長い石畳の上をこつこつと靴音を響かせながら優雅に歩く彼に揺らされ、少女はどうにでもなれと肩の力を抜く。
 遠くから東方の祭囃子にも似た笛の音が聴こえる。人々が歓談する声と少し湿り気を帯びた空気。
 かこんと落ちる鹿威しの音で現実に引き戻される。目的の場所についたのか、エメトセルクが横にいる誰かに声をかけている。懐から白い封書を取り出して手渡し、少女を抱いたまま彼は木造の離れに吸い込まれるように入り込んだ。
 背後でぱたんと襖の締まる音がする。
 上がり框に少女を降ろしてエメトセルクは自身も靴を脱いだ。
「ちょ、ちょっとまって、ここ、どこ?」
 何事もなかったかのように奥座敷へ向かうエメトセルクに、慌てて少女も靴を脱ぎながら追いかける。奥座敷の襖をぶっきらぼうに開け放ちながらエメトセルクは淡々と答える。
「…クガネだが?」
「そう、クガ……クガネ!?」
 驚く少女を置き去りに、丸窓の障子をあけ放つ。小さな中庭に植わった竹の間を蛍が飛んでいた。
 そのまま傍らの和風にアレンジされたソファにどかりと腰を下ろしたエメトセルクは、その手を少女に差し出した。
 少女が混乱したまま無防備にエメトセルクに近づく。その小さな手を掴んで自分の胸元に引き寄せる。向きを変え抱え込むような体勢で少女を自身の膝の間に座らせ、背後からその頭に彼の顎を乗せた。
「なんだ…不満か?」
「不満とかじゃなくて…混乱してるの…」
 小さな手で頭を抱えてため息をつく少女の姿を喉の奥で笑う。
「誰もお前を知らない場所の方がいいかと思ったんだが…なんだ、見られる方がお好みか?」
 からかう様に問われてかぁっと少女の頬が熱くなる。
「な、なにを言って…というか本当にどこなのここ?」
 きょろきょろと少女は室内を見回す。一見すると望海楼に見えなくもないがそもそもあの宿に離れはない。不自然な奥座敷、見慣れない調度品、先のわからない襖の先…その全てが知っているようで知らない場所だった。
「…花街は知っているか?」
「えぇと…」
 クガネには花街に住まう芸子のパトロンとなって出資する代わりに、成長する芸子に宣伝や一時の癒しを求めるという金持ちの道楽のような制度があることを以前聞いていた。
「…一応は」
「ここはその花街でも限られた者しか来れない宿だ」
 エメトセルクは端的にそう告げて少女の手を取り指先で弄び始めた。
「クガネにそんな場所が…」
 ぼんやりとそう呟く少女の顔を上向かせる。
「お前は英雄であるがゆえに表の顔しか知らないというだけだ。どの街にもこういった裏の顔はあるし…そこで色を売るものも少なくない」
「色を…売…る…っ!!」
 反復するようにエメトセルクの言葉を繰り返して、少女が真っ赤に染まる。わたわたと腕の中から逃げようとするのを察知して彼の腕が少女を絡めとる。
「…まさか花街にある宿屋が普通の宿屋だとでも思っていたのか?」
 にやりと唇の端を上げて心底楽しそうに笑うエメトセルクの様子に少女が腕の中から逃げ出そうともがきながら言う。
「どうせ、世間、知らず、ですよ…!!」
 ぐぐぐっと腕を一杯に突っ張って身体を離そうとする少女の様子に、さすがのエメトセルクも顔を歪める。
「往生際の悪い…!」
「だいたい! これのどこが、息抜きになるの!!」
「おや、英雄色を好むとも言うではないか」
 芝居がかった口調でのらりくらりと言葉を重ねながら、エメトセルクは少女の腕を絡めとりソファの上に止め付ける様に押さえつけた。
「別に私は…!!」
 反論の言葉をいうより前にエメトセルクの手が少女の顎を押さえ、その唇に自身の唇を被せて声を塞ぐ。容易く侵入した舌が口内を舐め回る。小さな舌を易々と絡めとり吸い上げれば少女の身体が大きく震えた。
 じっくりと嘗め回したその唇がゆっくりと少女から離れる。くったりとした身体は抵抗をやめその頬を赤く染めている。
「…そうやって…!」
 二の句を継ごうとするが途切れ途切れの息がそれを許してくれない。
 触れない程度の距離に顔を近づけてどこまでも楽しそうにエメトセルクが笑う。
「そのように物欲しそうな顔をされながら悪態をつかれても、説得力のかけらもないな」
「物欲しそうになんか…!」
 顔を真っ赤に怒るさますらエメトセルクを誘っているように見える。
唇を少女の耳に寄せ何度も音を立てて啄む。ちゅくちゅくと少女の脳裏まで響く音に、少女の身体が震えその口から声が漏れそうになっている。必死に押し殺すその様にエメトセルクの雄が昂っていく。
 唇を少し浮かせ強めにその耳に息を吹きかける。少女の腰が浮きあがるように跳ねる。
「…ふぁ…あぁぁぁっ…!」
 堪え切れず長い嬌声がその喉を震わせる。唇を離して見やれば、瞳の端に涙を浮かべた少女の顔がエメトセルクの瞳に飛び込んでくる。
 必死に睨み返そうとしてくるが、熱に浮かされた表情のままでは誘惑しているようにしか見えない。
 エメトセルクはその様子を目を細めて嬉しそうに眺める。
「…あぁ、いいぞ。その表情、たまらんな」
「…随分、いい趣味を、お持ちなようで」
 荒い呼吸の合間に皮肉を返してくるその様すら愉快である。
「…戦装束のままなのがマイナスだな」
 皮肉をひょいと躱してエメトセルクが指を鳴らす。戦装束から墨染姫君浴衣に着替えさせ、ついでに自分もクガネの町民たちと同じデザインの丈の長い着物に着替える。
 上から下まで舐めるように見てから満足気に笑う。
 少女がため息をついて肩の力を抜いた。困ったように眉を寄せてエメトセルクを見つめている。
 今一度顔を近づける。少女は顔を背けずまっすぐにエメトセルクを見ていた。
「抵抗はおしまいか?」
「…するだけ無駄だって悟っただけだよ」
 あなた、今の状況を心底楽しんでるでしょ? そう問われて愉快に笑う。
「あぁ…楽しいさ」
 その頬に口づける。
「受け入れる分には構わんが…今日は優しくできんかもしれんな」
 少女の唇を塞ぎながらエメトセルクの指が少女の太ももの内側をなぞる。その体がびくりと跳ねるのを何度も撫でることで楽しむ。
唇を離し見下ろせば上気する頬を今一度赤く染め少女が尋ねる。
「…どういう…」
 その首筋を唇でなぞりながらエメトセルクは応える。
「…私だって一人のオスだ、という事だよ」
 少女の秘部を少し乱暴に指で押しひらく。まだ少し固いそこは、それでも湿り気を帯びてエメトセルクの指を濡らしていく。
「ひぅっ……!」
「趣向を変えるか」
 パチンと音が鳴った。少女の視界が急に塞がれる。秘部をなぞる指の動きが脳裏で鮮明になる。
「…やっ……な、に…っ!?」
 困惑の声を秘部をなぞる事で途切れ途切れにしていく。秘部をなぞりながら頬を撫でられさらに混乱する。
「視界を塞いだだけでここまで感じるのか」
 耳元で低く、淫乱だな、と囁かれ少女がびくりと跳ねる。
 そのまま耳に唇を寄せ、強く吸い上げる。反対側の耳の先をこりこりと弄ばれ少女が嬌声を上げる。
「ひぁ…っあぁっ!! ああぁぁぁっっ!!」
 秘部に添えた指を動かさずとも、少女が跳ねる事でそこに擦り付けられていく。急激な快楽がその蜜壺から蜜を滴らせていく。
 何度も緩急をつけながらその耳を啄ばみ、舐め上げ吸い上げる。その白い喉がびくびくと震え溢れる嬌声がエメトセルクの耳に心地よく響く。
「ああぁぁぁ…っっ! …んぅっ…あぁぁ…っ!」
 唇を離し快楽で震える少女を見下ろす。半開きの口からちらりと赤い舌が覗く。目隠しの向こうで少女が涙を流しているのがわかる。
 その唇を覆い被さるように塞ぎ、舌と舌を絡める。秘部を弄る指の動きを再開する。膝を曲げさせ尻の蕾までゆっくりとなぞる。蜜を運び塗りつけるだけでひくひくとそこが反応する。
 唇を離し、息をつくタイミングを与えぬまま、尻の蕾に指を入れ込んでいく。
「ひぁっ…! や、やだ……っぁああぁっ!!」
 指先を何度かゆっくり出し入れする。その度に蜜壺から新たな蜜が溢れ出てくる。それを掬いまた尻の蕾に指を差し込み内壁に蜜を塗りつけていく。
 目隠しついでに布で固定しておいた腕は頭上から胸元に移動していた。その小さな手に口づけを落とすとそれだけで少女が震える。
 蕾の奥の奥まで入れ込んだ指で内壁を擦り上げる。長めの嬌声が少女が感じている様を伝えてくる。蜜壺はとめどなく蜜を溢れさせ、とろとろと少女の蕾と硬い突起を濡らしていく。
 空いている手で硬い突起をゆっくりと撫でる。その刺激で少女の内壁がきゅっと締まる。
「ひぅぅっ!! っあぁっ……だ、め…っ!!」
 かぶりを振ってびくびくと震える少女の反応をほくそ笑みながらも、エメトセルクの指は止まらない。
 優しくできないと言ったその言葉そのままに制止の声を聞かず少女を攻め立てる。
「や、だ…っやだぁっ……!! ひぁっ…ああぁっ!!」
 一度指を引き抜き、今度は二本指で少女の蕾に沈めこむ。太くなった広げられる感触に少女が強くかぶりを振って快感を逃がそうとしている。
 先程より解れたその場所が、エメトセルクの指に絡みつきながらその侵入を許していく。奥まで入れ込んで、その場所を広げるように指を開いていく。
「ぃあっ…! や、らぁ…っああぁぁぁっ!!」
 広げて、内壁を擦ればその体が大きく跳ねる。塞がれた視界が自分の置かれた状況をまざまざと想像させ、それがまた少女を煽っていく。
 突起を撫でる指を秘部に添える。ちゅくちゅくと音を立てて入り口を撫でれば困惑の混ざった嬌声が上がる。
「うあぁっ…!? …あ、ああぁっ…やめ…っ!」
 応えず、秘部に指を入れ込んでいく。すでにとろとろと蜜を溢れさせていたそこからさらに蜜が溢れ淫靡な水音を響かせる。尻の奥へ入れ込んでいる指を蠢かせさらに快感を引き出していく。
 前と後ろ、両方を塞がれ内側で蠢かれ、少女の喉が跳ねる。がくがくと震える体が1度目の波が近いことを物語る。
「やああぁぁぁっ!! や、らっっ…ひぁっ…ああぁぁぁっ!!」
 気をやってしまえと強く強く両の内壁を擦りあげれば、少女の体が強く跳ねる。きゅうっと締まる感覚にエメトセルクのオスが反応する。
 体を硬直させ快感に耐えようとするのを見ながら、エメトセルクは両の指を少女から引き抜く。震える嬌声に自然と口の端がニヤリと持ち上がる。
 エメトセルクは自身のいきり立つオスを少女の秘部に沿わせる。びくりと震えるのもお構いなしにその割れ目に擦り付け自身を蜜まみれにしていく。
 ねだる様にその口から小さな舌が差し出されている。その舌を吸い上げ絡め舐れば、びくびくと少女が跳ね蜜壺から新たな蜜を溢れさせる。
 十分に蜜をまぶされたエメトセルク自身をゆっくりと秘部から尻の蕾になぞる様に動かす。ぴとりと蕾にあてがわれ少女ががくがくと震える。
「まっ…! むり、むりだか、らっ…!!」
 かぶりを振る少女の耳に息を吹きかけ啄ばむ。
 言葉とは裏腹にその蕾はエメトセルクを求める様に蠢き反応している。
 ゆっくりとエメトセルクのオスが少女の蕾を割り開いていく。指でならしたとはいえ狭いその場所はみちりと音を立てながらその先端を飲み込んでいく。
「っあぁっ…! いっ…!!」
 その腹を指で優しく撫でながら、エメトセルクはそれでも侵入をやめない。
 息を止める少女の耳に唇を落として低く囁く。
「息を、吐け」
 その混乱する意思に届いたのか、少女が息を吐くのと同時にずるりとさらに奥へエメトセルクが入り込む。その侵入に押される様に息が吐かれ奥へ奥へとエメトセルクが進んでいく。
「…っ……っかはっ…! …ぅあぁ…」
 他人を受け入れてこなかったその場所に比較的易々とエメトセルクのオスを穿たれ、少女が浅い息を繰り返す。
 秘部から溢れる蜜を掬い、蕾にねちねちと音を立てて塗ればひくりと蠢いてエメトセルクの硬さを再認識する。
「あぁ、やはり、狭いな」
 途切れ途切れになる少女の思考に、囁くエメトセルクの声が優しく響く。
「狭くて、とても良く締まる」
 腹をゆっくりと指の腹で撫でられびくりと少女が反応する。痛みで拒絶されることも想定していたが、思っていたよりは抵抗なく少女がエメトセルクを飲み込んだ事に気を良くする。
「わかるか…? きゅうきゅうと、お前が私を締め付けているのが」
 どこまでも優しく、けれど残酷に現実を語れば、少女がかぶりを振って震える。
「…ちがっ…! ぅあぁ…」
「なにも、違わないさ」
 ずるっとまた一歩、少女の中にエメトセルクが埋め込まれる。拒絶ではない認識しようと蠢き締める感覚にぞくりと腰が疼く。
「私を認識しているだろう? お前の中を犯していく私を」
 ぞくぞくと少女の産毛が総毛立ち締まる力が強くなる。告げられ、認識し、意識がそこへ向けられる。
 目視できない状況が少女の脳裏に現状を浮かばせ、その想像で少女の息が早くなる。
 そっとその腰と背中に手を差し込む。
 少女の体を浮かせ、体を起こす。重力に逆らえず、少女の中を奥の奥までエメトセルクが穿っていく。
「…っぁああぁ!!!」
 白い喉を反らせ少女が長い嬌声を上げる。びくびくと震える体はいっぱいにエメトセルクを飲み込みその狭かった蕾は彼の形に大きく開かれていた。
「…どうだ? 全部飲み込めたぞ」
 その頭を胸で受け止めエメトセルクが静かに囁く。奥の奥まで穿たれたそこがみちりと音を立てる。震え硬直する体とは裏腹に、少女の秘部からはとろとろと際限なく蜜がこぼれている。
 そのままの体勢で少女の息が整うのを待つ。とんとんと背中を叩いてやればその動きに合わせる様に呼吸を合わせようとしてくる。
 少女の顔を上向かせる。その頬に唇を落とすとびくりと少女が震える。見えない、という状況で与えられる刺激に五感が研ぎ澄まされ、与えられる刺激を何倍にも増幅させて少女に伝えている。
 エメトセルクは何度かその頬に口づけを落とした後、おもむろに少女を穿ったまま立ち上がった。
 ゆさりと体を揺すられさらに深く繋がる様に少女の口から新たに嬌声が上がる。
「ぅああぁっ……ら、め…っ! うごかな…っ!!」
 静止の言葉を聞かず、ゆったりとエメトセルクは歩き出す。一歩踏み出すたびにゆさりと揺さぶられ少女の口から断続的に喘ぎ声が上がる。
「…っんあぁっ…!! やらぁ……お、くぅ…っ!!」
 奥の奥を突かれ、たまらず上がる声に少女を抱きしめる腕を強くする。もっともっと奥の奥まで犯し尽くしたいとエメトセルクのオスが声を上げる。
「奥が、いいのか」
 問われて少女の息が荒くなる。問いかけひとつで少女が追い上げられているのがわかる。
「…っがぅ……っお、く……っくる、し…っ!!」
 歩くたびに突き上げられ奥をこつこつと刺激され、少女はたまらず声を上げる。
 エメトセルクは一歩歩くごとに柔らかくなる少女の内側にニヤリとほくそ笑む。
 丸窓の縁に腰掛け少女を支え直す。さやさやと湿度を含んだ冷たい風が二人を撫でていく。
「……っうぁ…?」
「あまり声を大きくすると、不審に思われるかもしれんな」
 そういう場所の離れなのだ、そんなことはあり得ない。だが少女の少ない知識ではその思考には至らない。エメトセルクの腕の中でふるふると首を振った少女は明らかに狼狽えていた。
「…や、やだぁ…っ!!」
 目隠しで見えないけれど、少女が潤んだ瞳で見上げてきているのがわかる。
「…おね、がい…っ! やめ…っ…!」
 懇願を唇を塞ぐことで止める。少女の中で熱と硬さを増していくエメトセルク自身が止まることはないと現実を悟らせる。
 少女が困惑し恥辱にまみれる姿こそエメトセルクが最も興奮する要素のひとつと言っても過言ではなかった。
 ゆさりと少女の中を揺さぶる。びくりと震える体はエメトセルクの攻めを受け入れる準備ができていた。
 その唇を塞ぎながらゆっくりと少女を揺する。少しずつ揺すりながら内側に刺激を与えていく。うねる様に内壁が絡み締め付けてくる感覚にエメトセルクは徐々に少女を上下に動かしていく。
 唇を離し大きくグラインドさせる。
「…っひぅああぁぁ…っああぁぁ…っ!」
 快感に負けて少女の喉を嬌声が震わす。高めに出た声に慌てて口を押さえようとするも拘束された腕ではうまくいかないらしく、自らの手の甲を強く噛むことで耐えようとしている。
 その手をゆっくりと包み込み唇から離させる。
「傷になるぞ」
 大きくかぶりを振る少女の腕を片手で押さえゆっくりと抽送を再開する。
 くぐもった声を喉から上げながら少女がいやいやと首を振る。胸元にしまい込むように抱きしめ徐々に深いグラインドにしていく。
 堪えきれず、少女の口から喘ぎ声が上がる。
「…っぅあぁぁっ……! い、やっ……っあぁぁっ!!」
 嬌声を上げてはくぐもった声でそれを喉の奥に飲み込もうとする様にぞくぞくと快感が登ってくる。追い上げられる少女の声が熱を帯び、その熱に浮かされる様にうまく回らなくなった舌が幼さを残したような音を発していく。
「あぁぁっ…! っふ……っぅああぁ…や、らぁ…あぁぁっ…!」
 体を反らせ全身をびくびくと震えさせながら少女は大きく喘ぐ。止めたくても止まらない声に、奥底から訪れる快感の波に、かぶりを振って抗おうとしている。
 本来なら侵されるはずのない場所にエメトセルクを深く受け入れ、奥の奥まで彼の形に変えられその快感に抗えずにいる自分自身に、少女は喘ぎ声の間に疑問を上げる。
「っふぁ…ん…っ! な、んれ……っ? っあぁ…やらぁ…なん、れぇ…っ!!」
 ふるふると首を振るとさらさらとした前髪がエメトセルクの胸元をかすめていく。自身になんでと問いかける声すら快感の呼び水となる。
 声を上げるたびに少女の内壁がエメトセルクを強く締め上げる。そういう風にできているわけではないその場所を穿たれながら、まるで最初からそうするのが当然のようにうねり、絡まり、吸い上げ、締め付けてくる。もっともっと奥までと少女の心とは裏腹に体が求めてくるのを感じる。
 押さえていた少女の手からその頬に手を添えなおす。抽送をややゆっくりとしたリズムにしながらその頬を優しく撫でれば、その指の動きに少女の口がぱくぱくと動く。その頬に口づけを二度落としてから少女の唇を啄む。啄む間は緩やかな抽送を、唇を塞ぐように深く口づけてる間は深く早い抽送を繰り返す。追い上げられる少女の体が強く震える。
 唇を離しその耳に息を吹きかけ囁く。
「…お前のそこで、受け入れておくれ」
 芝居がかったその物言いに少女がふるふると首を振る。
「…っら、め…! ……っむ、り…ぃっ!」
 ダメと無理を繰り返しながら必死に縋りついて来ようとする少女の言葉を引き出そうと、エメトセルクは抽送を少しだけ止めてみる。止まった動きに少女の腰がひくりと蠢く。
「なにが、ダメなんだ?」
 耳に唇を寄せて落とすように呟けばびくびくと腰が跳ねる。
 かぶりを振りながら少女は途切れ途切れにダメと無理を繰り返す。その唇を優しく啄みながら少女の言葉を引き出そうと優しく頬を撫でる。
「……っあぅ…むり、なの……っこわ、れ、ちゃ…っ!」
 頬に唇を落とす。ぐちりと腰を蠢かせれば少女の喉が跳ねる。
「壊れてしまうか?」
「…っひぅ…! ら、め…っ…こわさ、ないで……っ!!」
 懇願がエメトセルクの耳をくすぐる。加虐心が頭をもたげる。壊して閉じ込めて自分だけのものにしてしまえばいいと心の奥底で欲望が叫ぶ。それを必死に押しとどめながら少女に優しく唇を落とす。
「なら…壊れないように気を張っていろ」
 答えは聞かず止めていた抽送を再開する。がつがつと貪るようなその動きに少女の喉が跳ねる。
「…っぁあぁぁ…ら、めぇっ……! …こわ、れ…っ…エメ……っ!!」
 強く少女を抱きしめその奥の奥に自身の欲望を叩きつける。強く少女の中が全部頂戴と締めあげてくる。その動きに合わせる様に奥の奥に出しきってゆっくりとエメトセルクは少女の中から自身を引き抜く。ずるりと音がするほどの快感を腰の奥で受けながら、今まさに抜き出した少女の中から自身の性が溢れていくのを感じる。
「…あぁ…ぅあ…」
 びくびくと震えながら少女がエメトセルクの腕の中で荒い息を吐いている。ゆっくり片手を振ってその目と腕の拘束を解いてやり、その瞼に何度も口づけを落とした。
 ふるふるとまつげが震えゆっくりと瞳が開かれる。目の端に溜まる涙を唇で掬い取って目尻に口づけを落とす。灯りが眩しいのか、数度薄目を開けたがまた閉じてしまう。
 ぐらりと落ちそうになる少女を強く抱きとめる。体に力が入らないさまを眺めエメトセルクは優しく微笑んだ。
 少女を抱きしめたまま立ち上がりベッドまで歩く。そっとベッドの上に少女を下ろして自身はベッドの縁に腰かけて少女の前髪を優しく梳いてやり、まだ震える体をじっくりと眺める。
 灯りに目が慣れてきた少女の瞳が再度ゆるゆると開かれる。ぼんやりと目線が定まらないまま荒い息を繰り返しているその唇に優しく口づけを落とした。
「……っうぁぅ…ひぅ……」
 びくりと跳ねた少女がのろのろと体を横に倒す。息がしやすくなったのか大きめのため息を吐き出す姿を眺めながらその腰を撫でる。
 少女の腰より下からこぷりと音がする。腰を撫でることで少女の中が蠢きその圧で吐き出されたエメトセルクの性が押し出されとろりと滴る。
「…風呂にするか」
 エメトセルクはとんとんと二度少女の腰を叩いてから立ち上がる。小部屋へ続く襖の先へ消えしばらくしてから戻ってくる。
 少女の体の下に腕を添え姫抱きに抱き上げる。些か上機嫌な足取りでエメトセルクは小部屋の襖を開け、指を鳴らして衣服を外しながらさらに奥の扉を開く。
 石造りの半露天風呂が目の前に広がる。宵闇に目が楽になったのか少女がぼーっとそちらを眺めている。
 少女を抱いたままゆっくりと風呂の中に体を沈めていく。一段高くなった場所に腰かけ少女の肩に湯をゆっくりとかけてやると、強張っていた少女の力が抜けていくのがわかる。そのまましばらくゆっくりと肩に湯をかけ続けて緊張がほぐれるのを待った。
 肩がしっかり温まったのを確認して、エメトセルクはそっと少女の蕾に指を添える。びくりとその体に今一度力が入る。
「力を抜け」
 短く告げて少女の蕾を指で割り開く。欲望を押し付ける動きではなく優しい動きでそっと少女の中に侵入したその指が中に溜まったエメトセルクの欲望をゆっくりと掻き出していく。
「……うぅっ……ふっ……」
 少女は大人しく唇に手を当ててその動きに逆らわないように揺れている。ゆっくりとした動きで少女の中からあらかた掻き出すと指を引き抜きさわりと蕾を撫でた。
 その指が離れたところで、少女もエメトセルクの腕の中から離れようとする。それを阻止するように彼の腕が少女の腕に絡む。
「……肩まで、つかりなさい」
 ぷくりと膨れてそう言って今一度少女はエメトセルクの腕からするりと抜け出る。エメトセルクの横に腰かけるとそのまま小さくため息をついた。
 動かないエメトセルクにじとりと少女の視線が投げられる。ひょいと肩を竦めてしぶしぶといった様子でエメトセルクは少女の前、一段下に腰を下ろした。その状態でもなお少し見上げる形になる小さな少女の手を大きな彼の手が包み込む。
「…ちいさいな」
 優しく指の腹で撫でながらどこかぼんやりとした声でエメトセルクが呟くように言う。
 その手をゆっくりと引いて自身の前に立たせる。その体を抱えるように抱き寄せ視線が合う高さに導く。触れ合う肌の温度が心地よい。
 少女が小首を傾げてエメトセルクを見つめる。温泉の熱に浮かされているのか、ぼんやりとした金の瞳が少女を見つめ返している。
 どうしたの? と少女が手を伸ばして頬に触れる。エメトセルクはそれを目を細めて受け入れる。優しく触れてなぞる小さな手に頬を寄せる。
「…そういえば、どうしてイル・メグにいたの?」
 ふと思い出して少女がエメトセルクに問いかける。
「姿が見えなかったからな」
 ただ探していただけだ、と簡潔に告げられる。
「…また、1人で無茶をしてどこかで倒れられても寝覚めが悪い」
「失礼な。あれ以来無茶はしてないでしょ」
 訝しげにエメトセルクの眉が持ち上がる。ほんとうに?彼の目が少女に問いかけてくる。少女はふいっと視線をそらして小さな声で言う。
「……そんなに」
「しているではないか」
「ちゃんと引き際を見極めているからいいでしょ」
 どうだかな、と肩を竦めてエメトセルクは笑う。
「これはまた、罰の与え甲斐がありそうだな?」
 それとも、与えてほしくてやっているのか?と問えばその頬が瞬間的に真っ赤に染まる。期待をしていないということもなさそうだ、とエメトセルクの口の端がにやりと歪む。
「我らの英雄様には一度体に教え込まないといけないらしいな?」
 額をこつんと合わせて鼻先を触れ合う。すりすりとこすり合わせてお互いを確かめ合う。
「……そうかも、しれない」
 瞳を伏せて小さく呟く少女の言葉をエメトセルクは聞き逃さない。少女の次の言葉を背中を撫でながら待つ。
「…私は、誰かに罰して欲しいんだと思う」
 小さな唇から懺悔にも似た呟きがこぼれる。
「赦してほしいんじゃないの。ただ罰して欲しいだけなの」
 小さく首を振る少女を抱き上げて今一度石段の上に座る。横抱きにして結ばれた髪をほどき手櫛で梳いてやる。
 少女はエメトセルクの膝の上でさらに膝を折り小さくなった。
「あくまで、赦しは請わないのか」
「赦される資格なんて、ないもの」
 膝に顔を埋め小さくなろうとする少女を上向かせる。夜風がその頬を撫でていく。
「…エメトセルク、絶対に、私を赦さないで」
 視線を交わらせ少女は懇願する。
「それは、お願いか?」
 問われて首を振る。少し考えて少女が口を開いた。
「…いいえ……あなたは、私を罰する。私はそれを受け入れる。私はあなたに赦しを請わない、あなたは私を赦さない…」
 考えながらゆっくりと言葉を発していく少女のその姿を見ながらエメトセルクはふむ、と口を開く。
「契約の更新か」
「…そうね、それが近いのかも」
 納得したように少女が言う。その声には幾分かの安堵の空気が流れていた。
「…本当に、それでいいんだな?」
 エメトセルクは少女を今一度しっかりと見つめる。少女もそれに応えて視線を交わらす。
「えぇ」
 了承の意をこめてしっかりと頷く少女の瞳には覚悟の色が滲んでいた。
「…そうか」
 短く呟いてエメトセルクはそれ以上何も言わずに少女の髪を撫で続けた。

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2019.08.21.初出

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