人の輪の中にあってなお、少女は薄い笑顔を讃えていた。 クリスタリウム、クリスタルタワー前広場にて。 星見の間から出てきた暁の面々はそれぞれに住人達に捕まっていた。出来上がる人の輪の真ん中で少女はいつもの調子で薄く笑…
【エメ光】混じり合う傷痕【尾を引く箒星7】
ちゃぷりと木桶の中でお湯が揺れる音がする。 エメトセルクの手がその湯に浸したタオルを引き出し固く絞る。それを受け取ろうとした少女の手を取り、小さな指先から優しく拭っていく。 「…自分で」 「私がしたいからしてるんだ」 少…
【エメ光】撥無の果て【尾を引く箒星6】
「珍しいな。お前が起きている」 ラケティカ大森林の木漏れ日の中、そののどかな光景に不釣り合いな黒い大剣を携えた少女を、エメトセルクは大木にもたれかかったまま眺めていた。 「……いつも寝てるわけじゃないよ」 身の丈ほど…
【公光】羨望
部屋主のいない室内に、くぐもった声が小さく響く。 整えられた室内の隅、整えられていたベッドのシーツはくしゃりと乱れ、枕に顔を埋めたまま半分フードの外れた水晶公は眉根を寄せて自身のオスに手をかけながら小さく息を漏らした…
【エメ光】旭日の支配【尾を引く箒星4】
いつの間に眠っていたのか…少女は瞼に当たる朝日の感触で目を覚ました。遠くから鳥の鳴き声と小さく波音が聞こえる。 昨夜一体どうしたんだっけ? そう思案しながら瞳をゆっくり開いた少女は、大きな腕に抱きとめられた自身を認識…
【エメ光】闇然の懺悔【尾を引く箒星3】
「…やはり、英雄殿には奇妙な趣味があるのか?」 いつか聞いたセリフを聞いた気がして、少女はゆっくり瞳を開いた。 「…珍しいね…こんなところまで追いかけてくるなんて」 視線だけを移して少女は見下ろしてくるエメトセルクを…
【エメ光】尾を引く箒星 2
少女がぼんやりと目を開ける頃、空には星が瞬き夜の虫たちが静かに合唱をしていた。 ベッドの縁に座ったまま片手で少女の手のひらを弄びながら本を読んでいたエメトセルクは、少女が身じろいだのを感じ視線を本から動かした。ぼんや…
【公光】群れの英雄
「ふぅ……んっ……はぅ……」 ぴちゃぴちゃと淫らな水音。堪えくぐもる声。 ギシリと音を立てるベッド。重なり合う2つの影。 少女は恥ずかしげにミコッテ特有の耳を伏せながら、一心に目の前のいきり立つ欲望を舌で愛撫してい…
【エメ光】底の箱庭
どこまでも暗く静かな揺蕩う波音に身を預け、少女はただぼんやりとそこにあった。 少し白くなった唇を指でなぞりながらエメトセルクは目の前の英雄と呼ばれていた少女を見つめていた。 時の流れさえ止まったかのようにただそこに…
【エメ光】輝き堕ちてなお
あつい、あつくて、さむい。真っ白で、真っ暗。何も見えない、聞こえない、聞きたくない。 揺り起こさないで、ここから出たくない。私は、私はーーー… ほんの一瞬の出来事だった。 仲間を、人を、世界を、護りたいと願い歩ん…