どこまでも暗く静かな揺蕩う波音に身を預け、少女はただぼんやりとそこにあった。

 少し白くなった唇を指でなぞりながらエメトセルクは目の前の英雄と呼ばれていた少女を見つめていた。
 時の流れさえ止まったかのようにただそこに揺蕩う古代の都市「アーモロート」
 この地に単身降り立った少女の身体はどうしてそこに立っていられるのかが不思議なほど、光に侵されていた。
 全ての大罪喰いの光を集積し、自身もまたバケモノに成り果てようとしているのに、その少女は軋む体と心を抑えてエメトセルクの庇護を選んだ。
 ここならば、あなたが、私を倒すでしょう?
 伏せた瞳はいつの間にかあの鮮やかな色を捨て始め、唇は白く変色しかけていた。
 いずれ訪れるであろうその時に、残された理性と知性で泣きながら隣人を切り裂くその前に、少女の決意は固く、人を愛するがゆえに人を守るために、エメトセルクの前にそれは差し出された。
 全てが思い通りに進んだわけではない。昔を思い出し苦々しくなるような旅路の果てに、彼はそれを手に入れることとなったのだ。
 ソファに座り行儀良く両手を膝の上に乗せたまま、少女はただエメトセルクの指の感触を感じていた。
 ここに来てからは、戦いと無縁の生活となったからか光の暴走で苦しめられる様子もあまりなかった。
 英雄は英雄であるがゆえに争いの最前線に立たされる。そこから逃げることができただけでも上々なのかもしれない。
 深い深い深海の底の底に、英雄のためにしつらえた小さな箱庭に、エメトセルクは大切に仕舞い込むかのように少女をそこへ導いた。
 何度か優しく唇をなぞった指はそのまま頬を撫でた。
「気分はどうだ?」
「わるく、ないよ」
 共に冒険していた時よりも数段落ち着いたトーンで、少女はエメトセルクに告げる。
 まだどこか硬さを残した声色は、心を許してないというよりは心配をさせている事実を悔いているようだった。
 元来少女はあまり人に頼るタチではない。冒険の始まりが「おつかい」と呼ばれたせいなのかは知らないが、彼女は人の望みは聞く割に自分の望みを言いたがらない。
 自己を顧みず他者に与える姿はたしかに英雄か聖者かと持て囃されてもおかしくはないのかもしれない。
 たとえ少し穏やかになったとはいえ、まだ光は少女を蝕んでいる。その状態でも少女は自身よりも他者を尊重する趣があった。
 そしてそれはエメトセルクに対してであっても変わることはなくて…
「エメトセルクこそ、ずっとここにいるけど、大丈夫なの?」
「なんだ、私がいることが不満か?」
「…私のせいで、あなたが成すべきことを成せないのも、寝覚めが悪いわ」
 視線をふわふわと泳がせながら少女は言う。
「気に病むな」
 短く告げると、やはり困ったように少女ははにかんだ。
 少女が困惑するのも分からなくはない、エメトセルクは頭の片隅でそう分析する。
 彼女たちにとってエメトセルクたち「アシエン」は敵であった。霊災を起こす者、悲劇の呼び水、それが彼らから見た我々アシエンだった。
 7つの世界を吸収してなお、我々「古代人」に満たない彼女たちを見下していたのも事実だ。
 相容れない、そう思っていた。だからこそ、エメトセルクは一縷の望みをかけて彼らの懐に入り込んだ。
 ……結果は上々と言える。人類の希望と言われた英雄に希望の詩は届かず、光届かぬ底で彼の手中に堕ちた。
 少なくない会話を旅の間重ねた。少女は知らなかった話を聞きたいとせがみ、エメトセルクはそれに応えた。遠い過去の話を、未来を夢見た話を、出来る限り伝えた。
 もちろん全てを分かり合えたとは思っていない。だが少なくとも少女の信頼を勝ちうるまでには伝えきれていたらしい。
 …もっとも、最後に取った行動のせいで危うく牙を剥かれかけたのも事実だが。
 だがそれも、「無事に帰す」と伝えれば少女はそれを聞き入れた。実際興味のある部分さえ聞ければ帰すつもりではあったのだ。正直に伝えれば、少女はきちんとそれを自分で考え納得するだけの意思と力があった。
「相手を知ろうとしてもいいんじゃないか?」そう言ったのはエメトセルク自身ではあるが、その言葉は思っていた以上に少女に響いていたとみえる。
 目下の問題は、その言葉が響いたからなのか元来からの性分だからか、少女は「知ろうとした上で相手を慮り自己を殺す癖がある」事だが。
「…私は、大丈夫だから…」
 このやり取りも何度目か。
 エメトセルクはそう心の中で呟きながら、少女の二の句を自身の唇を重ねる事で留めた。
 頬に添えた手にほんの少し力を入れ少女の顔を上向かせ、覆い被さるように唇を触れ合わせる。
 少女の唇を舌でなぞりながら離れれば、生娘のような反応が返ってくる。
「何度してもその反応は…ゾクゾクするな」
 征服欲で心が満ちていくのを感じながら、エメトセルクは口の端でニヤリと笑った。
 顔を朱に染め小さく震えながら上目遣いでこちらを見やる少女の姿に、エメトセルクの心は心地良いざわめきを起こす。
「慣れるものでもないでしょ…」
 視線を合わせているのも恥ずかしくなったのか、少女はふいっと視線を外しながら告げる。
 そこだけ見れば年頃の娘たちと変わらない、普通の少女に見えた。
 からかうような笑い声を短くあげて、エメトセルクは少女から身体を離した。
 傍らの果物の入ったカゴから、真っ赤に熟れた果実を取り出す。
 手袋を外しながら少女の隣に腰を下ろした彼は、同時に取り出したナイフで器用に果実の皮を剥く。
 プツプツとした果肉が露わになる様を少女も横でじぃっと見つめている。
 手早く半分ほど剥いて、エメトセルクはその果肉を食べやすいサイズにむしり取り少女の唇にあてた。
 ここにあるものは全て、少女の為に誂えた特注品…その光の暴走を抑える為にアシエンの持つ闇の性質を存分に生かした品々。今少女に餌付けしているこの果実も、見た目こそ普通に見えるがエメトセルク直々にエーテルの調整をし、闇のエーテルを存分に蓄えた劇薬に近い代物なのだ。
 たどたどしい動きでエメトセルクの手から果実を咀嚼しぎこちない動きで飲み込む少女の姿に、彼は無意識に微笑んでいた。
 征服欲と支配欲、独占欲と愛憎、綯い交ぜにした感情が彼に満ちていた。
 少女に慌てさせないように出来る限り緩慢な動きで果実を与えきると少女は小さく息をついた。
 どこか虚ろだった少女の瞳に、ほんの少しだけ光が戻った気がした。
 暴走の果てに大罪喰いと化した少女の姿に興味がないといえば嘘になるが…もう少しだけこの姿を味わいたいのも事実だった。いずれ訪れるその時があるのなら、少しぐらいそこを遠ざけてもバチは当たるまい。
 罪喰い化は止まらない。
 少女の中に決して消えない光があり続ける限り、いずれは必ず訪れる日が来る。
 もう1つの道を選ばず、全てを守る為に全てを捨てた少女に出来ることは少ない。
 エメトセルクは少女の少し白く変色した髪に触れる。
 ここを訪れた日から、少しずつ白に染まるその髪に、その肌に、否応無しに時間の経過を感じる。こんなにゆっくりと波の揺蕩う場所でさえ、少女の時間を留めることはできないのだ。エメトセルクに出来るのは、その時を出来うる限り遠くにすることだけ…ただそれだけなのだ。
 少女の髪をぼんやりと触っていたエメトセルクは、普段よりおとなしい少女に気づく。ふと見やれば、頬を朱に染め浅く息を吐いている。
「……すこし、多かったか?」
 独り言のように口から出た言葉で、少女の身体がびくりと跳ねた。
 劇薬のように濃縮された闇のエーテルを、ゆっくりとはいえそれなりの量を流し込めば内側で反発があってもおかしくはない。
「だ、だいじょうぶ。へいき、だよ」
 慌ててそう口にするも、熱に浮かされるのかどこかたどたどしく発せられた声に心がざわつく。
 髪を弄る手をそのまま頬に添えてみれば、少女はびくりびくりと身体を震わせる。
 強い力と力が反発し合う結果、どうやら少女のいろいろな感度が上がるらしい、と気づいたのは彼女がここにやってきて割とすぐのことだった。
 最初の頃はその熱を外に出す術がわからず、部屋の隅でベソをかき続ける少女に手を焼いたものだ、と彼は思い出しては心の中で笑った。
 エメトセルクはゆっくりと少女の耳に唇を近づけ出来る限り小さく低く囁くように声をかける。
「…身体が、熱いのか?」
 短いその語句だけで、少女の身体は震え固く閉じた唇からくぐもった音が鳴る。
 出せないのなら発散させればいいのだ。その熱を。
 エメトセルクはそのままゆっくりと少女をソファの上に押し倒すと、その首筋に顔を埋めそっと舌で撫でた。
 途端に彼の下でびくびくと少女の身体が震える。
 啄ばむように優しく唇で食むたびに少女の口から嬌声が溢れそうになる。
 理性が邪魔するのか、なかなかタガの外れない少女の意識を散漫にする為に、首筋から唇を離したエメトセルクは、覆い被さるように少女の唇に自身のそれを重ねた。
 舌を入れ、絡ませ、なぞり、吸い上げる。その1つ1つの動きに少女の身体が跳ね上がる。
 膝の力が緩んだのを見計らって、エメトセルクは少女の下半身から服を剥ぎ取ると彼女の割れ目、その秘部に指を滑り込ませた。
 何度かその入り口をなぞり、嬌声が出かかるところで舌と舌を絡ませ吸い上げれば少女の身体が小刻みに跳ね上がる。
 声を自由にあげられない、それだけで快感が倍増するのを見越して、エメトセルクは的確に少女を攻めあげながら少女のタガを外していく。
 幾度か入り口をなぞりそれなりに湿ったのを確認した後、エメトセルクは少女の中にそのすこし筋張った指を潜り込ませた。
 瞬間的に唇を離せば、艶やかな嬌声が彼の耳をくすぐる。聞こえるように音を立ててゆっくりと攻め立てれば、その動きに合わせるように嬌声があがり、少女の腰も快楽を求める動きを始める。
 外れていく理性のタガを見下ろしながら、的確に攻めあげながら、その額に、瞼に、唇に、祝福のごとく優しい口付けを降らす。
 快楽に震え跳ねる身体を逃さぬようにエメトセルクの指は少女の大事な場所を攻めあげる。
 何度かぐちぐちと中をかき混ぜ、硬かったその場所がほぐれてきたのを感じた彼はゆっくりとその指を引き抜いたかと思うと今度は二本の指を揃えて奥まで一気に押し込んだ。
 少女の中を弄りながら、親指で柔らかくほぐれた蕾を捏ねる。
 途端に少女の腰がびくびくと跳ね、その唇から絶え間なく嬌声があがる。
 もう、タガは外れ切ったようだった。
 溢れてくる声を押し殺せず、快楽に喘ぐ少女をどこまでも満ち足りた表情でエメトセルクは攻め立てた。
 今、この時、少女の全てが彼の手中にある。
 短くなる嬌声が、少女の限界を伝える。
 その耳に唇を寄せ、エメトセルクは囁く。
「…全て、私に、寄越せ」
 一際強く攻め立てると、長い嬌声と跳ね上がった腰が少女の限界の訪れを表した。
 びくびくと快楽に震える少女の身体を優しく抱きとめながら、エメトセルクはゆっくりとその指を少女から引き抜いた。
 ぬちっと淫靡な音を立て引き抜かれた指に反応して、また2度3度少女の身体が跳ねた。
肩で息をする少女に何度も何度も口付けを降らす。
 そっと上体を起こしたエメトセルクはそのまま少女の身体も抱き起こし自分にもたれかからせた。
 エメトセルクの胸に半ば顔を埋めて、浅い呼吸を繰り返す少女の背中を優しく撫でた。
 徐々に呼吸が収まるにつれ、揺り返しで光が強くなっているのを感じる。
 おそらく理性のタガも戻りつつあるが、均衡が取れていないのならこの先に進むしかない。
 バランスを間違えたな…と心の中でだけ少女に詫びを入れながら、エメトセルクはあやすようにその耳に優しく息を吹きかけた。
 途端に収まりかけてた呼吸が早くなる。短く身じろぐような嬌声があがる。
「すまないな、私もそろそろ限界でね」
 少女の手をエメトセルクの太く熱くなったそれに導けば、その指がびくりと跳ね驚きで見開かれた瞳がエメトセルクの金の瞳を見つめ返す。
 いつまでも生娘のようなその反応にほくそ笑む。それでいい。我々に染まるようでは弱すぎる。
 反応は生娘でも既に何度も身体は重ねている。エメトセルクは一度跳ねて遠ざかった手を再度自身に添わせる。
「わかるだろう? どうすればいいのか」
 耳元で囁けば、恥ずかしさからか耳がさらに赤く染まり、羞恥からか身体がピクピクと震える。
 それでも数度その耳に息を吹きかけてやれば、少女はたどたどしくその指をエメトセルク自身に絡みつかせゆっくりと上下に擦り出す。
 何度やってもぎこちないその動きに、生娘のように震える体に、彼の中の欲が暴れ出そうとする。
 征服したい、支配したい、独占したい、永遠に愛しあいたい。
 覆い被さり、蹂躙し尽くせば、もしかしたらという思いもある。でもきっとそれは少女の顔を曇らせるだけでそれ以上の効果を生まないだろう。またいつもの、自分を押し殺して成されるがままの「英雄」へと逆戻りだ。
 エメトセルクはそれを望まない。せっかく手に入れた小さな少女をそんなちっぽけな欲で散らしてしまうことを、彼は望まない。
 だからこそ彼は、少女の羞恥を最大まで嬲る。
 言葉で、態度で、今この体を重ね合わせる時だけ、少女の魂を揺さぶり英雄の殻を破らせる。
 生娘のように羞恥しながらも、何度も重ねた身体はこの先を覚えている。なにをするのか、なにをされるのか、なにがおこるのか。
 少女のさまざまな感情が綯い交ぜになりその瞳の端に涙が溜まる。エメトセルクはそれを舌ですくい上げ、せめて怯えることだけはないようにと何度も唇を重ねる。
 そのたどたどしい指の動きの合間に、今一度少女の秘所に指で触れれば、新たな愛液がくちくちとその入り口を濡らしていた。
 とろりとしたその入り口は、今か今かと待ちわびるようにヒクついている。
 エメトセルクは一度唇を離すと、身体を少し動かしてソファに座りなおし、少女の耳に息を吹きかけ腰を跳ねさせながら少し寂しそうな声色で懇願する。
「お前自身で、入れてみてくれないか…?」
 目を見開いて顔を赤くしエメトセルクを凝視して固まった少女の様子を、心の中で愛らしいなと愛でながら
「……ダメか?」
 わざと芝居掛かって言えば少女の表情に途端に困惑と羞恥が混ざり合わさる。
 我ながら卑怯だな、と思わなくもない。
 少女の本来の気質を利用して、殻を破らせようとしているのだから。
 懇願はした。少女はそこに応えようとするだろう。だが少女の英雄の気質は同時にこうも思うはずだ。「それで気持ちよくなってしまったら、果たしてそれはどちらの感情を優先していることになるのか?」
 相手のために自分を押し殺すという本質に対して、もし自身の快楽が勝った場合、それは相手を重んじていることになるのか?
 正常な人であれば、それは両立するとわかるであろう。しかし、少女は少女として振る舞うより先に英雄として振る舞うことを望まれてしまったのである。圧倒的なまでに相反事例に対する人生の経験値が足りていない。ゆえに彼女は困惑する。考えれば考えるほど困惑し、考えれば考えるほど行為を想像して羞恥に染まる。
 想像で顔から湯気が出るのではないか、そう思うほどに真っ赤に染まった少女に追い打ちをかけていく。
「…ダメか?」
 今一度尋ねれば、困ったように眉を寄せてどうしようと口に出さずともわかる態度でオロオロとし始める。
 答えが出ていない少女は、エメトセルクの金の瞳を見つめたまま次の言葉を探している。
 エメトセルクは思い知らせるように、彼自身に絡まったままの少女の指にそっと触れる。少女の顔色が困惑と羞恥を行ったり来たりする。
 自身の手の中で熱く脈打つ太いそれに意識を持っていかれてる少女の耳に息を吹きかけ綯い交ぜにしていく。
 そっと耳に唇を押し当てる。わざとくちゅりと音を立てて耳を舌で嬲る。
 少女の喉の奥から嬌声が響き渡る。短く強いその嬌声はエメトセルクの耳に心地よく響いた。
 少女の腰が耳を舐められた音に合わせて跳ねる。それに合わせて彼女の指もびくりと動く。その動きに呼応するようにエメトセルク自身もびくびくと熱を増していく。
 くちゅくちゅと水音の合間にもう一度、悲しげな声色を含ませてエメトセルクは懇願する。
 少女の脳内はここまでの問答ですでにパンク寸前なのかもしれない、おそらくあまり判別が付いてない有様のままこくこくと縦に振られた頭に追い打ちをかけるように感謝を述べる。
 そこで初めて少女は、図らずも行為に了承してしまった自分に気づく。少女本来の生真面目さが、一度了承したことを無下にできないと知っていながらなのだから我ながら意地が悪い、エメトセルクはそう心の奥底で笑う。
 少女は目の前の金の瞳を見つめたまま、どうしようと少し逡巡した後、おずおずと腰を浮かせた。
 恥ずかしさが勝ったのか視線を不自然にエメトセルクから外したまま、少女は自らの割れ目にエメトセルクの大きなそれをぴとっとあてがった。
 そこで少女はさらに逡巡する。ここからどうしよう、と固まった少女に追い打ちをかけるようにエメトセルクはわざと自身の先を少しだけ少女に押し当てる。少女の口から驚きの含まれた愛らしい声が上がる。
 2度3度とぴとぴととつけて離れてを繰り返せば、観念したのか少女はゆっくりと腰を下ろし始める。
 両の手はエメトセルクの胸元で快楽と不安定感から逃れようと必死に布を掴む。
 ゆっくりと下される腰に、じわじわと肉を割ってその奥に導かれるその感覚に、脳の奥が痺れる。決して余計な動きはしていない、ただまっすぐ下されているだけなのに、搾り取られるかのような強い締め付けを感じる。
 少女も、ゆっくりと下りることでよりエメトセルクの形を感じるのか、甘い響きを含んだ喘ぎを口から漏らす。
 あともう少しで全てが入りそう、その瞬間を見逃さずエメトセルクは少女の腰を掴みぐいっと下へ押し付けた。押し付けられた彼女の秘部からぱちゅんと淫らな水音が響き、急な動きに対応できなかった少女の口から悲鳴に似た嬌声があがる。
 奥の奥まで繋がった自身の欲望が一段と熱を帯びるのがわかる。その感覚ににやりと笑うエメトセルクとは裏腹に少女は肩で息をしながら固く目を閉じて快感の波を逃がそうとしていた。
「…私がわかるか?」
 意地悪く問いかければ、腕の中で身じろいだ少女は言われた意味を一度反芻し…気づいたのかさらに顔を赤く染めうっすらと瞳を開く。
 その瞳を、視線を逸らさないようにエメトセルクの金の瞳は見つめ続ける。
「そうか、わかるか。そうだよな、わかるようにゆっくりと入れていたのだものな」
 決してそんなことはないのをわかっていながらそう声をかければ、さらに意識してしまうのか腰が跳ねる。跳ねる腰に合わせて繋がった場所からどちらのものともつかない淫靡な水音がする。
 少女の中は柔らかくうねりエメトセルク自身を包み込み、その生温かい感覚にどこか安らぐ自分を感じる。どれだけ長い時間を過ごそうとも、やはり人の温もりは例え一時触れ合うだけでも良いものだな、とエメトセルクは独りごちた。
 一方の少女は意識を外せなくなったのかエメトセルクと視線を合わせながら…いや、その視線すらもどこかふわふわと怪しげに漂いながら、腰を蠢かせてはびくりと止まり彼自身を再認識する行為を繰り返していた。
 言われるとそちらに意識を持っていかれてしまうのは少女の長所でもあり短所でもあった。そちらに意識を持っていかれると言うことは、他の部分が無防備に晒されているという事実に他ならない。
 少女の腰を落とし込んだその手は、少女の体をじわじわと持ち上げ、身じろぎの狭間タイミングを見計らって今一度強く少女と深く繋がるために振り下ろされる。
 意識を急に戻されて少女の喉が跳ねる。その喉元に優しく口づけすれば少女の唇から嬌声が溢れる。
 何度か肩で息をした少女は文句を言いたげな目線でエメトセルクを睨んだ。その睨む視線すら熱を帯び心地良い刺激となる。
 ひょいと肩を竦めその視線をいなしたエメトセルクは腰に回していた手を尻に回しさわりさわりと触れながら少女の次の動きを促す。
「ほら、動いてごらん…出来るだろう」
 言われた少女はエメトセルクの胸に顔を埋めかぶりを振る。白くなりかけた肌は赤く染まりまだ少女は人であると切々と訴えかけてくる。
「出来ないか…?」
 訴えればやはり意識がそちらに持っていかれるのかびくびくと肩が震え短く荒い呼吸の音が聞こえる。何度かかぶりを振る少女の髪の毛がさらさらと揺れ動く。
「…ならばこちらから行くぞ。」
 エメトセルクは吐き出すように告げると、少女の尻を下から抱え上げ些か乱暴に下ろした。
 熱を帯びたエメトセルクのそれが少女の体を穿っていく。
 持ち上げて、下ろす。ただそれだけの動きに耐えられない少女は腰を、喉をそらせ甘い蜜を滴らせながら、ぞわりとするほど甘い嬌声を上げる。
 乱暴なその動きに翻弄されないように、エメトセルクの上着をつかんでいた少女の手は強く何度も握られた。
 深く、浅く、角度を変えながらもどこか淡々と、エメトセルクは少女の体を持ち上げて下ろす。磨りあがる感覚に、少女の奥の奥が自身を締め付ける感覚に、今一度脳の奥が痺れる。
 生娘のような反応とは裏腹に、少女の身体は行為の意味を…エメトセルクを知りすぎていた。今でははっきりとエメトセルクの形に添わされた少女の蜜壺は彼が欲しいと蠢き絡みつく。
 奥まで欲しいと訴える身体と恥ずかしさで朱に染まる意識に、少女は翻弄され与えられる刺激から逃れられない。
 その嬌声の上がる唇を舌で舐め上げ、唇を重ねる。気持ちのいいところに少女を落としながら声の上がるギリギリで舌を絡め塞ぐ。行き場のなくなった快感の波が少女をより追いやっていく。
 何度も何度も攻め上げる。何度も何度も嬌声を塞ぐ。追い上げられる少女の意識はもうどれを感じ取っているのかすらわからなくなっていた。
 エメトセルクは舌を外し、啄ばむように数度彼女の唇に自身の唇を触れ合わせながら少女の様子を見やる。
 追い上げられた少女の唇からは絶え間なく嬌声が溢れ、繋がったその場所からは止めどなく愛液と淫らな水音が響く。震える身体は快感に溺れかけ、それでもどこか虚ろな瞳はエメトセルクの金の瞳をぼんやり見上げていた。
 限界が近いのは、お互いに同じようだった。
 少女の蜜壺に、その肉の壁に何度も己自身を打ちつけながらエメトセルクは腰の奥から来る快楽を少女に流し込むために宣言する。
「奥で…受け取れ…っ!」
 これがトドメだと強く打ちつけ、エメトセルクは自身の欲望を少女の最奥に注ぎ込む。弾かれたように少女が仰け反りそのままビクビクと震えた。少女の中を満たしてなお溢れ出る彼の欲望が少女の愛液と混ざり合い結合部から溢れ出た。
 彼の欲望は即ち闇と同義。少女の揺り返されていた光はその闇と混ざり合っていく。バランスを取り戻したのか、少女の中で燻っていた光がおとなしくなっていく。未だ奥底の光は煌々と輝いているがとりあえず表面上はマシなレベルにまで回復した。
 エメトセルクは少女のその小さな身体を、優しく抱き留めた。彼女の肩に顔を埋め数度大きく息を吐く。古代人と言えど人である。放出すればそれなりの疲労感もある。数千年生きてきてなおこれだけの昂りを持っている自身の姿に、本当に人間じみたなと喉の奥で笑う。
 その笑い声が聞こえたのか、浅い呼吸の合間に身じろいだ少女の、エメトセルクよりもうんと小さな手が、おずおずと彼の頭に触れその髪を撫でた。どこか遠慮がちながらも優しいその動きをエメトセルクは甘んじて受け入れた。
 こんな風に意識を飛ばすほどまぐわっても、少女の本質は変わらない。目の前にいる人に手を伸ばさずにいられないのである。
 ゆっくりと顔を上げれば、どこか憂いを帯びた潤む瞳と出会う。少女はそっとエメトセルクの顔に手を伸ばす。目の下のクマをなぞってくすくすと愛らしく笑う。
 なんだかちょっと居た堪れないような気恥ずかしい気持ちになって、エメトセルクは繋がったままの己自身で少女の中をかき混ぜた。途端に少女の口から艶めかしい声が上がる。
まだ硬さを持ったエメトセルクの形を再認識した少女は恥ずかしそうに俯いた。
 あれだけ激しく意識をやっても、少しすれば回復するのは、若さゆえか冒険者ゆえか。荒い息のままそれでも少女は気恥ずかしそうに身じろぎ、まだ濡れそぼった彼女の最奥は今一度エメトセルクを受け入れる準備を再度始めていた。
 どれだけ注ぎ込んでも何も変わりはしないことを理解している。ただその身体に、残った理性に、覚えていろと自身の欲を吐露しているだけなのだと、たとえ闇と同義と言われたアシエンでも小さな少女を救うことはできないことを解りながらも、それでもと、祈るように少女を掻き抱く。
 自身の中でまた熱を帯び硬くなっていくエメトセルクを感じて、少女の口からくぐもった喘ぎ声が上がる。
 どこからあれだけの力を振り絞って脅威と戦ってきたのか、そう訝しむほど小さな身体を、そこにまだ在る熱を逃すものかと抱きしめる。
 エメトセルクはそのまま少女を抱え上げ立ち上がる。繋がったままのそこが動きに合わせて脈打つように上下し、少女の蜜壺もそれに呼応するように彼を深く飲み込もうと蠢いた。
傍の寝台まで数歩、ゆっくりと少女を抱き締めながら歩むエメトセルクの動きに呼応するように、小さく長いため息のような嬌声が少女の喉を揺らす。
 立ち上がったおかげでより深く繋がったそこに押されて吐き出された息を追うように、少女が上向いてぱくぱくと探すような動作で唇を動かす。一度立ち止まり、唇を落としてやれば安堵したように縋り付く少女の舌がエメトセルクの唇を掠めた。何度か啄んでやると、安心したかのように呼吸が安定していく。その様子を見てまた一歩歩みを進める。再開された刺激に、先ほどよりも明瞭になった嬌声が彩りを添える。
 ほんの数歩、その間にしっとりと濡れた少女の蜜壺はエメトセルクを咥え込み、絡みつき、その刺激にさらなる昂りを感じる。
 ゆっくりと、繋がったまま優しく寝台に少女を下ろしその額にかかった前髪をそっと払った。
 結合部を軽くゆすり、一度奥深くまで挿入し少し大きめに息を吐いたエメトセルクの頬に少女の指がおずおずと触れる。視線を少女にやれば、何かを感じ取ったのかどこか寂し気な表情で彼にそっと手を伸ばしていた。
 どこまでも他者を思いやろうとするその態度に、胸の奥がチクリと痛む。
 私のことはいいんだとかぶりを振りかけるがそれよりほんの少し早く、少女の指がどこまでも優しい手触りでエメトセルクの頬を撫でた。その指の動きはどこまでもゆったりと緩慢でそれでいて彼の事を労わるように優しく撫で続けていた。ゆっくりと導かれるように少女の首元に顔を埋めれば、その頭を掻き抱くように優しくその腕に抱かれる。
 繋がったままのそこをくちりと動かす。小さく呻くように声を上げながらも少女はそっとエメトセルクの髪を梳き頭を撫でた。
 深く息を吸い込んでどこか甘い蜜を思わせる少女の香りを鼻腔の奥に運ぶ。深く吸い込んで吐き出した息がこそばゆいのか、少女が小さく首を竦めた。
 何度も髪を、頭を優しく撫でるその動きに揺蕩うような揺らぎを感じながらエメトセルクはされるがままとなっていた。その小さな手指のどこかぎこちなくも相手を労わる動きが心地よかった。
 いずれ失われる、私の手元から去っていく。優しくあやすように撫でられるその温もりもいずれ消え去る、そうわかっていてもエメトセルクは人のぬくもりを求めてしまう。…少女の温もりを求めてしまう。
 身じろぎ顔を上げたエメトセルクは少女の視線と目を合わせる。ぼんやりとしながらも優しさを湛えた表情のまま、少女は彼の頬をそっと撫でた。大丈夫だとその手に優しく自身の手を重ねその手のひらに口づける。彼の手の中で少女の手のひらがその優しい啄みにくすぐったいと小さく身じろいだ。
 何度かそうして少女の手をあやしてから、エメトセルクは彼女の腰の下に手を潜り込ませそっと腰を持ち上げた。未だ熱を失わないその場所は待っていたとばかりにくちくちと音をさせながら彼の思うがままの体位に導かれた。
 見下ろすような形で少女の足を抱え上げたエメトセルクは、深く繋がったままぐりぐりと奥の奥まで届くように腰を押し付け中を掻き混ぜた。抑えきれない快感に少女の口からくぐもった甘い響きが上がる。まだ手を伸ばしていた少女の指に口付けてエメトセルクは静かに告げる。
「掴まっておけ、振り落とされるぞ」
 告げた次の瞬間、腰を一気に引き抜き乱暴にグラインドさせる。唐突に始まった強い抽送に少女は耐えきれず強い嬌声を上げる。行き場を失った両の手はそのままベッドに落ち、きつくシーツを掴んだ。
 獣のように激しく腰を打ちつけるその動きに呼応するように、少女の喉が震え嬌声が絶え間なく響く。ぱちゅんぱちゅんと淫らな水音と2人の荒い息が狭い箱庭に木霊する。緩急もつけずひたすら打ちつけるその行為に脳が真っ白になる。
 どこまでも一方的なまでのその行為に、それでも少女は喘ぎ、かぶりを振り、快感の波に揉まれていた。奥の奥が熱くなり、彼をひたすら受け入れたいと体が勝手に反応する様にまた羞恥で赤くなる。
 その様子を見下ろしながら、エメトセルクは口角が上がるのを感じる。一方的に押し付ける情熱のどこまでも身勝手な自分の有様を、それすらも快楽に変え懸命に応えようとする少女の姿を、その全てが滑稽に映る。どれだけ綺麗事を言おうとも所詮まぐわってしまえばただの男と女に成り果てるのだと自虐にも似た笑みが漏れる。
 打ちつける水音が、早くなるグラインドがお互いを攻め立てる。ただひたすらに打ちつけるその動きにお互いを快楽の向こうへ追いやろうとする。
 熱を帯び短く強くなる嬌声に少女の限界が近いことを知る。エメトセルク自身にもあまり余裕は残っていなかった。チカチカと明滅を繰り返す意識を手放さないように、力の限り少女に自身の欲望を叩きつける。
 一番強く、少女の奥に叩きつけるようにエメトセルクは欲望の固まりを吐き出した。少女が短く嬌声を上げて彼の下でびくびくと痙攣するように震えた。明らかに狭いその場所に収まりきらなかった2人の欲望が混ざり合いシーツの上にぱたぱたと落ちた。
 荒い息を何度か吐いて、少女の中から彼自身を引き抜くと、くぐもった少女の喘ぎと共に掻き出されるようにさらに多量の2人分の愛液が混ざりあいシーツに染みを作った。
 少女の横にそっと体を横たえたエメトセルクは、まだ全身で荒い息をしている少女の頬にそっと触れる。優しく親指の腹で少女の頬をゆっくり撫でてやるとその動きに呼応するように荒い息を頑張って整えようとしているのがわかった。ゆっくりでいい、と伝えるように優しく撫でればシーツを握りしめていた少女の指がそっとその手に触れた。まだ震えるその指は辿るようにエメトセルクの手をなぞり確かめるように小さく彼の人差し指を握った。
 少女の息が整っていくのがわかる。ゆっくりとその頬の輪郭を撫で続けていたエメトセルクはそのまま寝に入りそうな少女の様子に、そっと手を外しながら薄掛けのタオルケットを少女にかけ、出来る限りそっと起こさないように少女を抱き寄せた。
 自分よりもはるかに小さな体を腕の中に抱きとめる。光に侵されつつあるその肌はひんやりと陶器のような冷たさでエメトセルクの指先の熱を吸い込んでいく。せめて微睡みの中でぐらい光に追われることがないようにと今一度頬に手を添えその顔にかかる髪を払う。
 軽く手を振って部屋の照明の光量を落とせば、薄暗くなった部屋に窓の外から水面の揺らぎが差し込む。半分蒼く染まった世界に少女の規則正しいすぅすぅとした寝息だけが聴こえる。
 エメトセルクは少女を掻き抱いたまま静かに瞳を閉じる。どうかせめて、その最期の時まで、微睡みに揺蕩えるようにとそう祈りながら。
 どこまでも暗く静かな揺蕩う波音に身を預け、少女とその男はただぼんやりとそこにあった。

――――――――――
2019.07.30.初出

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

計算結果を数字で入力してください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください