少女がぼんやりと目を開ける頃、空には星が瞬き夜の虫たちが静かに合唱をしていた。 ベッドの縁に座ったまま片手で少女の手のひらを弄びながら本を読んでいたエメトセルクは、少女が身じろいだのを感じ視線を本から動かした。ぼんや…
【エメ光】尾を引く箒星
「英雄様には奇妙な趣味があるんだな」 硬い感触を感じながら、ぶっきらぼうに投げかけられた言葉に私は意識を揺り戻す。 硬い床の感触を頬に感じる。体が重い。頭がぼんやりと痛い。 這いつくばるように肘で上半身をかろうじて…
【公光】赤い瞳の思案
ここはどこだろうか。 私は見知らぬ天井を見上げながらぼんやりと瞳を開ける。アーチ状の梁を見つめながら記憶を揺り戻そうとする。 「あ、目が覚めましたか?」 不意に横から声をかけられて思考を分断される。ゆっくりと顔を動…
【公光】群れの英雄
「ふぅ……んっ……はぅ……」 ぴちゃぴちゃと淫らな水音。堪えくぐもる声。 ギシリと音を立てるベッド。重なり合う2つの影。 少女は恥ずかしげにミコッテ特有の耳を伏せながら、一心に目の前のいきり立つ欲望を舌で愛撫してい…
【エメ光】悲しみに沈む町
アーモロート、この街はいつ来ても悲しみに沈んでいるね 世界があるべき姿に戻ってから幾日たっただろうか。 闇の戦士と呼ばれた私は、その日も1人海の底に沈む海底都市に来ていた。 あの男が作った幻影都市アーモロートは、…
【エメ光】残滓
名前を呼ばれた気がした。 懐かしい名前、今はもう呼ぶ人もいない呼び声。 「…………ク…………ト………ク…!」 ゆさゆさと揺さぶられる感覚に、目を開ける。 目の前に眉根を少し寄せて心配そうな顔をした少女の顔があった…
【エメ光】底の箱庭
どこまでも暗く静かな揺蕩う波音に身を預け、少女はただぼんやりとそこにあった。 少し白くなった唇を指でなぞりながらエメトセルクは目の前の英雄と呼ばれていた少女を見つめていた。 時の流れさえ止まったかのようにただそこに…
【公光】憧れを抱きしめて
遠い遠い記憶の底に大事にしまい込んだ美しい原風景がある。 青く輝く水晶の塔、満天の星空、仲間たちの笑顔……あなたの笑顔。 あの日々は今も宝物となって、オレの心の中で輝いているんだ。 「少し、話そうよ」…
【エメ光】輝き堕ちてなお
あつい、あつくて、さむい。真っ白で、真っ暗。何も見えない、聞こえない、聞きたくない。 揺り起こさないで、ここから出たくない。私は、私はーーー… ほんの一瞬の出来事だった。 仲間を、人を、世界を、護りたいと願い歩ん…
【エメ光】その愛の名は 2
そこに在るだけで、世界は滅びに向かっていく。強い光はもう世界に影を落とさせない。 「お前はここに居るだけでいい。やりたいことがあるなら、それをすればいい。わたしはお前に強要はしない。」 エメトセルクは海底都市アーモロ…