物言わぬ英雄は前すら見据えない。 その英雄を見つけたのは、ムジカ・ユニバーサリの上空に梁のように備え付けられた天井回廊の上だった。まるで人を避けるようにふらふらと覚束ない足取りで歩く英雄は、罪喰いたちの不自然な襲撃と…
【公光】手触り【手触り2】
「おかえりなさい」 クリスタリウムに戻って早々に部屋で休め! と居住館に押し込められたものの、そう言えばマーケットを覗いておきたいのだったとするりとドアを抜け出して。管理人さんに直ぐに戻るよとだけ声をかけてペンダント居…
【エメ光】手触り
「…あなた、そのクセまだ治ってなかったの?」 スリザーバウで久方ぶりにヤ・シュトラと再開した闇の戦士とそのご一行は今後の方針を彼女の自室で話し合っていた。 互いの持つ情報を交換していたのだが、当の本人であるミコッテ族…
【エメ光】花は揺蕩う【記憶の彼方/欠片の記憶】
思えば一体どれほどの時間を1人耐えていたのかと思う。 キタンナの洞窟で告げたように、生き残ったアシエンは3人いたが3人ともが全く同じ思いで事に当たっていたとは思えない。 少なくとも私は……失った同胞を取り戻すという…
【エメ光】見つめる夢幻【記憶の彼方/欠片の記憶】
どうしよう、どうして、どうしよう。 頭の中はずっとぐるぐるしてる。あぁ、考えることをやめたい。 すごく、すごく混乱してるのに、妙に冷えたもう1人の私がそれを見ているような感覚。 こうなると手は動いてても何かを作り上げるこ…
【エメヒュあの】染まらぬもの
それは生まれたての何ものにも染まらない色をしていた はじめてあいつをみた時の印象は今でも忘れない。 おおよそ平均よりも小さな体全体に纏う圧倒的なエーテルの渦。さまざまな色形をしたそれに染まらない魂の色。 よく言え…
【エメ光】欲の果て
「…相変わらず死に急いでるな」 レイクランドの廃村の倉庫に押し込まれて固い木箱に押し付けられたまま、降りてくる声に顔を上げる。打ちつけられた木枠の隙間から漏れる光がふたつの人影をひとつにする。 「…うん」 背中に感じ…
【エメ光】瞳の向こう側【記憶の彼方/欠片の記憶1】
最初の印象は、「ぼんやりしているな」だった。 平凡、凡庸、朴訥、ありふれて一般的な、凡そ英雄などと呼ばれるにはふさわしくない様相に見えた。 近づいたのは利用する為。もののついでに、どれくらい統合が進んでいるのか確認…
【公光】泡沫
やっぱりここでもか、私は息を吐きだしてその集落に背を向けた。 歩いてきた足跡がどこまでも追いかけてきて厭になる。ぎゅっと胸を締め付ける様に掴んで足早に歩を進めた。 知らない、何も知らないんだ。 ++ 「…英雄殿が、…
【エメ光】別離の言葉は告げずに【尾を引く箒星9】
仄暗い海底の底から愛を込めて 本当は、誰にも告げず、ひとりで進む予定だった。 少女は心配そうに覗き込むいくつもの顔の前で薄く微笑んだ。仮面をかぶれ。この気持ちを悟られるな。 体は光のエーテルの暴走で常に騒がしいのに…