あつい、あつくて、さむい。真っ白で、真っ暗。何も見えない、聞こえない、聞きたくない。
揺り起こさないで、ここから出たくない。私は、私はーーー…
ほんの一瞬の出来事だった。
仲間を、人を、世界を、護りたいと願い歩んできた道の終わりと思っていた場所で、突きつけられた現実に本能が理解を拒否する。
大袈裟な動作で緩慢に動きながら、自らの居場所を伝えるその男の声だけが耳に残っている。
行かなければ、あの男に会いに。会って、決着をつけなければ。
その思いだけで、1人で、ここまでやってきて。あと一歩、あと一歩だったはずなのに。
「あぁ…まったく、これだからなりそこないは…」
冷たい金の瞳が倒れ込んだ私を見下ろしてくる。感情の見えないその瞳が見下ろす少女の小さな体は、溢れ出る光を抑えきれず地に伏している。
「今一歩…と思っているのかもしれないが、全くもって届いていないぞ」
動けない少女の目の前にしゃがみ込み、思っていたよりも抑揚のない声でエメトセルクは喋り続ける。
「もっと賢くやってくれ…その程度では我々の足元にも及ばんぞ」
少し大きなため息が降りかかる。
動かないと。ここでこうしてても何も事態は好転しない。
「苦しいのか?痛いのか?…そうして人の枠から外れられないのもある意味滑稽か…」
ララフェル特有の長い耳を摘み上げ、手持ち無沙汰気味に弄ばれる。
「お前への興味は尽きないが…ここでは些か趣にかけるな」
興味を失ったように耳から手を離した彼は立ち上がり辺りを見渡している。
アーモロート、古代人たちが住んでいたと言われる古の都市。淡く緑に輝く遠くの風景、クリスタルの意匠がふんだんに使われた街並み、そこを目を細め見やるエメトセルク…
「その小さな身体に教えてやろう…我々には到底及ばない事実を」
軽い指を鳴らす音と共に、周囲が歪む気配がして少女はその気配とともに意識を手放した。
背中に伝わるどこか柔らかい感触。まぶたの裏にゆらゆらと波間のきらめき。薪の静かに爆ぜる音…
そこまでゆっくりと認識して、少女は違和感を覚えゆっくりと目を開ける。
見覚えのない天井、吊り下がるシャンデリア。
小さく音の方向に目を向ければ、赤々と燃える薪がパキパキと小さく爆ぜていた。
ここはどこ? そう自身の記憶に問いかけるより先に、少女の視界にエメトセルクが現れた。
「…ふむ、さすがは英雄か。思っていたよりは目覚めが早かったな」
起き上がらなければ、少女がそう身じろぐより早く軽い調子でエメトセルクは少女の胸の上に手を置き、少女が起き上がることを阻止した。
そう大して力を入れていないはずのその手を振り払うことができず、少女は目を見開く。
肘で体を押し上げようにも、その軽く触れている手を押し上げることができないのだ。
「…どう、して」
「そりゃ、私が手を置いてるからに決まっているだろう」
さも当然のように悠々とそう告げる彼の顔を、どこまでも怪訝そうな表情で少女は見つめ返した。
「…光の暴走で今まさに壊れる寸前のなりそこないのお前に、私が負けるとでも?」
見下され、お前なんてその程度なんだと突きつけられる。自然と奥歯をかみしめていた自分がいる。
「…睨むな。お前の力が私に及ぶはずもないのは、考えるまでもなく明らかだろう?」
エメトセルクが指先にほんの少しだけ力を入れて少女の胸を押す。普段であれば少し触れたか当たってしまっただろうか?と思う程度のその力に、思っていた以上の重圧を感じる。
「……かっ…あっ…?」
「おっと、押しすぎたか」
指の力を抜いて、その指が胸と腹を二度三度撫でる様に往復する。服の上からなのにぞろりとした奇妙な感触が撫でていくさまがわかる。
「その眠ったままの脳みそを叩き起こせ。お前の本質は光であった。…では我々アシエンは…」
「……闇……」
「正解だ」
それは反発しあうエネルギー、混じり合ったとしてもいずれまた元に戻る相容れないもの。
彼の指が喉を撫でるだけで呼吸が細くなるのがわかる。なにかに締め付けられているような感触が首を包み込んでいる。
「苦しいか? そうだろう苦しいよな? お前が大罪喰いを倒して得た力のせいで、正常化しているように見えていた世界のバランスは元に戻り、全ては我々の計画通りとなったのだからな」
あざ笑うように、エメトセルクは喉元に唇を寄せふうっと息を吐いた。首周りを抜けていく生暖かい吐息がさらにぞわぞわと少女を追い立てる。
「元英雄様、気分はどうだい?」
吐息が交差するほど近く、顔を迫らせにたりと笑うその顔は、どこまでも愉悦で歪んでいた。
「……さい、あく…!」
「ははっ、それでいい!!その程度の憎まれ口くらい叩いてもらわければこちらとしても愉しくない!」
どこまでも愉快そうな声色で、男は笑う。
「だが…これでは会話も交渉もできそうにないな」
喉元から手を離したエメトセルクは今一度胸元に手を置く。
「話すこと…なんて…」
まだすこし息苦しい喉をこじ開けるように、少女は悪態を放つ。だがそれすらもそよ風のように受け流してエメトセルクは笑う。
ぎしり
どうやら寝かされていたのはベッドだったらしい。エメトセルクが体勢を変えたことにより背中の柔らかな感触の正体に気付く。
膝をついて少女の正面に座り、覗き込む。
「苦しい苦しいお前の光を、除いてやることもできるんだぞ…?」
蠱惑的な誘いにピクリと心が揺れる。その心の揺れの隙に入り込むようにその男はにやりと笑いさらに告げる。
「お前が望むのなら、それを除いてあげようか…?」
この、苦しみから、解放される…?
英雄と呼ばれた少女の、一番真ん中がその蠱惑的な誘惑に反応する。それに身を委ねてしまえばもう苦しむことはなくなるのでは…淡い期待が胸をかすめる。
その心に理性が警鐘を投げかける。アシエンの姦計に乗ってはいけないと声がする。
「……今……」
漸く息が整ってきた少女は、吐き捨てるように告げる。
「ここで、Yesと答えても、結局新たな大罪喰いが誕生するだけ…そんな見え透いた罠に、引っかかると思ったの?」
背負ってきた物が脳裏に浮かぶ。その全てを危険にさらさないために、少女はこの場所に1人できたのだ。
睨みつければ、鼻で一度笑ったエメトセルクがさらに高らかな声で嘲笑する。
「あぁ…あぁ! いい! それでいいぞ!! それでこそ英雄!! それでこそ光の戦士!! ……いや、今は闇の戦士だったか…? まぁどちらもでいいか。」
上 機嫌に胸元の指が動く。その動きにぞわりぞわりと背筋が総毛立つ。
「その反抗的な目! 狡賢く動く思考! 口から飛び出す憎まれ口さえ面白い!」
くくっと喉の奥で笑う音がする。本能が逃げろと告げている。
「…なんと言われようと、私はアシエンには屈することはできない」
それが私を信じて、私を追いかけてきてくれた人たちに対する裏切りになることを知っているから。少女の瞳はかつての輝きを取り戻しかけていた。
「楽しみだなぁ…英雄様。お前の心が屈してしまうその時が」
乾いた指を鳴らす音。
いったい何が起きたのか? そう確認する前に気付いてしまう。彼はそのスナップひとつで少女の衣服を取り除いていたのだ。
「やっ…!!」
身を隠そうにも、乗せられた腕のせいで動けない。羞恥で頬が、全身が赤く熱くなっていくのがわかる。
恥ずかしさに身をよじれば、彼の金の瞳と出会う。
値踏みするようにねっとりと、舐めるようにじっくりと、エメトセルクの瞳が少女の身体を視姦していく。
じっくりと見終えたエメトセルクは思ったままを口にしていく。
「なかなかどうして…ララフェル族は小さいだけの種族かと思っていたが、思っているよりも筋肉がついているのだな。いや、これはお前が冒険者だからか…? 冒険者にしては傷が少ないな。癒しの魔法の賜物、というべきか」
思いつくままを端から言われて、答えに困る。思ってたよりも褒められているという事実に脳がついていかない。
「肌のキメも細かい…あれだけ野外で活動してる割に日焼けで傷んだ様子もない、悪くないぞ」
エメトセルクの指が辿るように胸元から腹に移動する。もう片方の手は少女の少し曲げた膝に乗せられている。
くいっと少女の膝に置いた手にエメトセルクが力を入れると、大した抵抗もなく少女の秘部が露になる。
「やぁっ…!!!」
胸元から手がどいたことでほんの少し軽くなった上半身をよじって少女は細い声を上げた。
その小さな手が反射的にエメトセルクの手に伸び、そこで闇の影響を受けて重くなったのかぱたりと小さく音を立てて落ちた。
にやり、そう音が聞こえてきそうなほど愉快な表情をして、その男は自分の下にいる小さな少女と視線を交わらせる。自然と少女の身体が緊張で強張る。
「…お前たちにはアシエンとしては散々やられたからな。このあたりで仕返しをしても罰は当たるまいよ」
楽しそうに笑うその声に、自然と喉がひきつる。
「恨むなら、光の戦士としてお前を産み落としたハイデリンと、英雄と呼んだお前の仲間たちを恨めよ」
エメトセルクはそう言うと、露になってる秘部に指を這わせた。
「…ひっ……!!」
そのぞわりとした感覚に自然と声が上がる。
まだ固く乾いたその場所を手袋越しに何度か触れて、エメトセルクは手袋を取り払った。
少しごつごつとした指が秘部に押し当てられ、割り開かれる。
「やめ…!」
抗議の声をあえて上げさせたまま、彼の指が少女の入り口をぐちぐちといじる。
「…成人女性だったよな? それでこれか。なるほどなるほど…」
なにかに感心したように頷きながら、エメトセルクは手のひらの中で震える少女を楽しそうに見やった。
開き、嬲り、視姦する。その指が、少女の花芯を捕らえ、壊れ物を扱うようにただただ優しく撫ぜてゆく。
「や、やだ…! やめ…!」
「やはり…お前、生娘か。」
確信がいったという口調で言いながら、エメトセルクはその指を止めない。
少女は気づけば瞳一杯に涙をためたまま…視線を今まさに弄られている場所から反らせないまま震えていた。
「一人遊びすら満足にしてこなかったのか」
エメトセルクの呟くような独り言すら耳に届かない。
こわい。そこが大事な場所なのは知っている。男女が裸になってする事といえばひとつしかないことも…その過程も結末も。だがそれは知識として知っているだけ、冒険の際に頭の片隅に入れて置くべきと判断したから知っているだけなのだ。
徐々に解れてきた花芯が柔らかく揺れるたびに、喉の奥から知らない声が聴こえてくる。
入り口に溜まりつつある愛液の蜜を掬い丹念に花芯に塗りこんでいく。
「やだ…やめて…やだ…」
壊れたラジオのように少女は繰り返す。快楽より先に恐怖が勝っているようだった。
瞳一杯にたまっていた涙は知らず知らずのうちにぽろぽろと大粒の涙になっていた。
「どうした、あの強気な口調はどこに行った?」
少女の入り口を丹念に撫でながら、エメトセルクは少女を見下ろす。
気丈に睨み返そうとする少女の瞳から、また大粒の涙が転がり落ちる。
「まだ屈してもらっては困るからな…だが、このままでは快楽までは遠そうだな」
エメトセルクはそう言うと少女の秘部にいきり立った自身を押し付けた。
瞬間的に少女は身の危険を感じ逃げ出そうとするも、押さえつけられた体はやはりうまく動いてくれない。
「ここでひとつ講義の時間と行こうじゃないか」
くちり、入り口と触れ合った彼の欲望が水音をわざと揺らすように動く。
「なに…を…」
恐怖で混乱している少女にエメトセルクは尋ねる。
「ヴァウスリーを作ったのは誰だ?」
「……あなた、じゃない…」
あれもまたアシエンの犠牲となった命の一つだ。生まれる前から運命を変えられてしまった哀れな使途。
「そう、私だ。光を与え、あれを生まれながらに罪喰いへと変容させた…ここまではわかるな?」
思い出したようにくちくちと少女の入り口を嬲る。まだ何も受け入れた事のない蜜壺は、愛液を湛えてもなお固く閉じられているようだった。
「私はある程度なら光を制御することもできる。ヴァウスリーに与えたように。さてここからが本番なのだが…」
吐息のかかる距離までエメトセルクの顔が迫る。ぐちゅり、愛液の音が響く。
「……一度取り出してもう一度注ぎ込んだ光は圧縮される。今よりもさらに濃く、累積されていく。お前に宿った光がこれほどまでに強大になったのもその圧縮効果の賜物だ」
少女の腹に指を添える。二度三度撫でその手触りを楽しんだのち、エメトセルクはどこまでも意地悪く笑う。
「…器になりうるお前の光を取り出して、戻したら、どれだけ圧縮されるだろうな…?」
ほんの数秒、少女は固まる。意味を反芻するように飲み込んで、それを理解した瞬間、その獣は少女の中に強引に割り行ってきた。
「それ…かっ…あっ…!!!」
固さの残るその蜜壺は不意の侵入に対応しきれず淫靡な音を立てる。つま先から頭のてっぺんまで電流が流れたかのような強い刺激に苛まれる。
「…やはり、せまいな」
その言葉とは裏腹に、エメトセルクは少女の中、奥の奥へと歩みを進める。分け入り、穿つその太い欲望が少女をさらに貶めようと蠢く。少女のそこは破瓜の証で薄く血を流していた。
「ふっ…うっ…」
くぐもった声が狭い部屋に響く。気づけば自らの指を強く噛み声を我慢している少女がいた。
「傷になるぞ」
エメトセルクはその手を唇から離させると、少女の様子を観察した。
肩で息をしながら、与えられた望まぬ苦痛と腹の中に入る異物感耐えようと身をよじる姿。
それを見下ろしながら、エメトセルクは問いかけを投げる。
「今も、光で苦しいか?」
荒い息の合間に少女はぼんやりと自身の手を見る。あれほど光を放っていた自身の身体からほんの少しだけ光が治まってるように感じた。
「そうだ、今私がほんの少しだけお前の光を預かっている」
腹の上に置かれている手から、先ほどまでの強い違和感は感じない。
「そして、これを少しずつ戻す」
「あっ…ああぁっ…!!」
少女の喉が跳ねる。嬌声にも似た叫び声が狭い部屋に、暗い深海の底に木霊する。
エメトセルクの腰がゆっくりと動き始める。まだ固さを帯びたそこに、ほんの少量ずつ光とともに自身を入れ込んでいく。
「やだ…っ! なに…!! んっ…あぁぅ…!!」
あまりにもすんなりと受け止められる光の奔流が、エメトセルクの腰の動きと合わさり少女の身体に少しずつ快感を刻み込んでいく。
今まで知らなかった、知り得なかった快楽の波に、少女は意識をやらぬように必死にシーツを握る。
「やはり…お前から預かった光だからか、お前にすんなりなじむな…!」
そう確認するように言いながら、腰の動きを徐々に早めていく。一方的なグラインドに、少女の喉から嬌声が漏れる。ゾワゾワとした駆け抜けるような快感に、少女は何度も目を見開く。
打ち合わさる腰の音とどこまでも淫靡な水音が嬌声の合間に聞こえてくる。
「まずは一度目だ…受け取れっ!」
エメトセルクはそう鋭く叫んで、少女の中に己の欲望と残った光を叩きつける。
「や…あ、あぁぁぁぁっ…っ!!」
長い嬌声と共に少女の身体が大きく跳ねる。注ぎ込まれた光はゆっくりと少女になじんで輪郭を丸くしていく。一方その蜜壺にどくどくと注がれたエメトセルクの欲は、収まりきること叶わずシーツの上にパタパタと染みを作っていく。
一瞬の静寂のあと、少女の中で光が膨らむ。
「あ、あああぁぁ!!」
強く握りしめたシーツが波打つ。それは嬌声ではなく悲鳴。大きくなる光に耐えきれないように少女の小さな体が跳ねる。
その光は爆発的な輝きを放ったが…少女はまだそこにあった。
「は…ははは…! 素晴らしい、素晴らしいなお前は!!」
エメトセルクは、自分の下で必死にその苦痛から逃れようとかぶりを振る少女を見る。
「まだ足りぬか! まだ満たされぬか!!」
光のただ中にあってもなお、少女の歪な魂はまだそこにあった。
「頑強な魂だ! あぁ、素晴らしい! その魂の所為でお前は屈することも逃れることもできない!!」
エメトセルクは少女の中に入れたままの自身を大きくグラインドさせる。水音が溢れ、掻き出されたそれでさらにシーツに染みが増える。
「…な、い…っ」
そのグラインドの間に、少女が苦しげにつぶやく。
「屈し、ない…っ! …で…きっな、い…!!」
体は快楽に濡れそぼっているのに、まだ心が折れない少女の姿にエメトセルクの抽送が早くなる。
エメトセルクの口の端が愉悦に歪む。
「そうか…なら、耐えて見せろ…!! お前が屈するか、耐えれなくなるか、どちらが先か、あぁ、楽しみだな…!!!」
男の欲望に満ちた叫び声が静かな海の底に木霊した。
――――――――――
2019.07.30.初出