【エメ光公】吠える狼は牙を持たない【手触り5】

【エメ光公】吠える狼は牙を持たない【手触り5】

 されど狼は月に吠える  牙を剥くその月に向かって 「お前は学習能力がないのか」  かけられた声に答える声はない。  英雄のために設えた部屋の真ん中で、闇の手に絡め取られた英雄が喉を唸らせて吠えた。その耳は立ち尾はぶわり…

【光公】求めず与えず受容する【手触り4】

【光公】求めず与えず受容する【手触り4】

 英雄は伸ばす腕を持たず  レイクランドに罪喰いの不可解な襲撃があったその日、水晶公は英雄の自室の前にいた。  クリスタリウムの防備に集中していてタワーから離れられなかった水晶公に、レイクランドの前線で戦ってくれていたか…

【公光】手触り【手触り2】

【公光】手触り【手触り2】

「おかえりなさい」  クリスタリウムに戻って早々に部屋で休め! と居住館に押し込められたものの、そう言えばマーケットを覗いておきたいのだったとするりとドアを抜け出して。管理人さんに直ぐに戻るよとだけ声をかけてペンダント居…

【公光】泡沫

【公光】泡沫

 やっぱりここでもか、私は息を吐きだしてその集落に背を向けた。  歩いてきた足跡がどこまでも追いかけてきて厭になる。ぎゅっと胸を締め付ける様に掴んで足早に歩を進めた。  知らない、何も知らないんだ。 ++ 「…英雄殿が、…