【エメ光】瞳の向こう側【記憶の彼方/欠片の記憶1】

【エメ光】瞳の向こう側【記憶の彼方/欠片の記憶1】

 最初の印象は、「ぼんやりしているな」だった。  平凡、凡庸、朴訥、ありふれて一般的な、凡そ英雄などと呼ばれるにはふさわしくない様相に見えた。  近づいたのは利用する為。もののついでに、どれくらい統合が進んでいるのか確認…

【公光】泡沫

【公光】泡沫

 やっぱりここでもか、私は息を吐きだしてその集落に背を向けた。  歩いてきた足跡がどこまでも追いかけてきて厭になる。ぎゅっと胸を締め付ける様に掴んで足早に歩を進めた。  知らない、何も知らないんだ。 ++ 「…英雄殿が、…

【エメ光】別離の言葉は告げずに【尾を引く箒星9】

【エメ光】別離の言葉は告げずに【尾を引く箒星9】

仄暗い海底の底から愛を込めて  本当は、誰にも告げず、ひとりで進む予定だった。  少女は心配そうに覗き込むいくつもの顔の前で薄く微笑んだ。仮面をかぶれ。この気持ちを悟られるな。  体は光のエーテルの暴走で常に騒がしいのに…

【エメ光】揺蕩う午睡【尾を引く箒星8】

【エメ光】揺蕩う午睡【尾を引く箒星8】

 人の輪の中にあってなお、少女は薄い笑顔を讃えていた。  クリスタリウム、クリスタルタワー前広場にて。  星見の間から出てきた暁の面々はそれぞれに住人達に捕まっていた。出来上がる人の輪の真ん中で少女はいつもの調子で薄く笑…

【エメ光】混じり合う傷痕【尾を引く箒星7】

【エメ光】混じり合う傷痕【尾を引く箒星7】

ちゃぷりと木桶の中でお湯が揺れる音がする。 エメトセルクの手がその湯に浸したタオルを引き出し固く絞る。それを受け取ろうとした少女の手を取り、小さな指先から優しく拭っていく。 「…自分で」 「私がしたいからしてるんだ」 少…

【エメ光】撥無の果て【尾を引く箒星6】

【エメ光】撥無の果て【尾を引く箒星6】

「珍しいな。お前が起きている」  ラケティカ大森林の木漏れ日の中、そののどかな光景に不釣り合いな黒い大剣を携えた少女を、エメトセルクは大木にもたれかかったまま眺めていた。 「……いつも寝てるわけじゃないよ」  身の丈ほど…

【エメ光】月のない夜の記憶【尾を引く箒星5】

【エメ光】月のない夜の記憶【尾を引く箒星5】

 ペンダント居住区 闇の戦士居室にて  ララフェルの体には大きすぎるベッドの上で、少女は小さく丸くなって眠っていた。  外は宵闇。月の出ない夜は星明かりも弱々しく瞬く。いつもは空を見るため開け放たれた窓はぴたりと閉じられ…

【公光】羨望

【公光】羨望

 部屋主のいない室内に、くぐもった声が小さく響く。  整えられた室内の隅、整えられていたベッドのシーツはくしゃりと乱れ、枕に顔を埋めたまま半分フードの外れた水晶公は眉根を寄せて自身のオスに手をかけながら小さく息を漏らした…

【エメ光】旭日の支配【尾を引く箒星4】

【エメ光】旭日の支配【尾を引く箒星4】

 いつの間に眠っていたのか…少女は瞼に当たる朝日の感触で目を覚ました。遠くから鳥の鳴き声と小さく波音が聞こえる。  昨夜一体どうしたんだっけ? そう思案しながら瞳をゆっくり開いた少女は、大きな腕に抱きとめられた自身を認識…

【エメ光】闇然の懺悔【尾を引く箒星3】

【エメ光】闇然の懺悔【尾を引く箒星3】

「…やはり、英雄殿には奇妙な趣味があるのか?」  いつか聞いたセリフを聞いた気がして、少女はゆっくり瞳を開いた。 「…珍しいね…こんなところまで追いかけてくるなんて」  視線だけを移して少女は見下ろしてくるエメトセルクを…